2月第3週は、おそらく一年で一番お暇な週なので、仕事はぼちぼち進め、部屋の片付けをしたり、春支度をしたり、民宿へ行ったり。
また、自己啓発週間と銘打って、気になってたミステリーを連日読み。
※2月17日(月)
『開かせていただき光栄です』皆川博子(ハヤカワ文庫)
18世紀のイギリスの解剖学というあなたの知らない世界が、邪悪にして耽美に、グロテスクにてインテリジェンスに広がる。豪華な推理のフルコース、〆のデザートまで巧緻を極める。
※2月18日(火)
『隠蔽捜査』今野敏(新潮文庫)
著者がエッセイで「これで結果が出なかったら作家を辞めるという覚悟で書いた作品」とあったので読んだ。渾身の気持ちは入っているが筆の力は自然体である。さすがだなあ。
※2月19日(水)
『ハルビン・カフェ』打海文三(角川文庫)
舞台を含めテクニカルなガジェットが、重厚で硬質な人間ドラマを輝かせている。人間が繰り返す愚かな過ちは神の悪意なのなら正義という大儀はなくなるのだろう。
※2月20日(木)
『掏スリ模』中村文則(河出文庫)
単なる犯罪小説ではなく、深い精神世界と旧約聖書の絶対神の世界が織り成すノワールとなっている。不条理で絶望的な物語ともいえるが主人公の生への執着が救いとも言える。
※2月21日(金)
『雪冤』大門剛明(角川書店)
第29回横溝正史ミステリ大賞受賞作。冤罪と死刑制度という重いテーマ。仕掛けの数々のツイストがききすぎているので辻褄会わせにやや疑問も残るが。(苦笑)
※2月22日(土)
『扉は閉ざされたまま』石持浅海(祥伝社文庫)
このトリックとロジックはさほど驚くほどでもないが、犯人を追い詰める意外な探偵役が魅惑的でスリリング。結局、世の中最大のミステリーは男女間の恋愛心理なのかもしれない。
推理小説を書いている間は、なるべくプロの書いたミステリーは読まないようにしている。だって、比較しても仕方がないのだが、どうしても自分の下手さに嫌気がさしてしまうので。
で、執筆再開前のまとめ読みもしたし、今後は、書きあがるまではミステリーは読まないかもね。
でも、この6冊を読んで良かったと思う。
とくに、皆川博子『開かせていただき光栄です』は、素晴らしかった。
何が、素晴らしいといって、作品は、著者80才を超えての新境地なのだよ。
50ちょいの素人のわしが、作風に迷いを感じている場合ではないのだ。
書くしかない。